十二支腸

「なあ、十二支って知ってる？」
「知ってる。当たり前だろ」
突然の問いかけに何事かと思う。
「あの、子・牛・寅・卯・辰ってあれだろ」
「そう、それ」
彼はしばらくの間、黙ってから切り出した。
「実は俺、十二支腸なんだよね」
ん？
十二指腸といえば、小腸の一部の事だったと思うが。
この言い方からすると……
「そのじゅうにし、って干支のほうの十二支？」
「よくわかったね。そう、一般的な人たちの十二指腸と俺のそれは違うんだよ」
「というと？」
「年が明ける、つまり干支が新しくなると、基本的にその干支の動物が食べるものしか食べられなくなる」
ほう、と思った。
「何でも食べる動物はいい。草食動物は草しか食べられない。食べられる草も種類が違う」
「大変だね」
「龍なんてなに食べればいいのって」
「確かに」
気を遣うだろうな、と思う。
「ちなみに今年は？」

「……ドッグフード。戌年だから、一応」