すいません

ある日、高校生の加藤は腕にかゆみを感じた。
みると、ピンクの発疹ができている。
その日から、加藤はスパイダーマンよろしく、蚊の能力を手に入れた。能力というより、人間の血を吸う習性が身についた、といったほうが正しいかもしれない。
名前は変える必要がないものの、せっかくなので蚊藤に改名した。
ところで蚊藤には、好きな女の子がいた。同じクラスの彩夏ちゃんだ。
彼女は蚊藤の前の席に座っている。それがいけなかった。
蚊藤は授業中、後ろからずっと彩夏ちゃんを見ている。

吸いたい。

タバコではない。血を、だ。
別にドラキュラではないため、首筋でなくともよい。腕だろうと、足だろうと、乳頭だろうと。
衝動は収まらなかった。
蚊藤は思い切り彩夏ちゃんに吸い付いた。
「ちょっと加藤君、何してるの」
「あ…すいません」
「すいませんって、吸ってるじゃん！」

彼女はその日から、彩蚊になった。