早く眠りたい

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一限が始まる前に委員長が黒板に何かを書く。

『現代文、自習』

「先生が睡眠期に入られたので、以後現代文は自習となります」
委員長のハッキリとした声が教室に虚しく響いた。

人々の時間感覚は銘々に狂ってしまった。個人差はあるが、睡眠期というものが生まれた。
地磁気の乱れだとか、宇宙人の攻撃だとか、連日人々は騒いで、実際は誰も理由をわかっちゃいなかった。

睡眠期は年単位のものだ。だから現代文はずっと自習。級友達も半分は眠っていて、もしまた会えても学年が違うだろう。

遂には級友がみんな眠ってしまった。私は学校に行かなくなった。
街を歩いても、かつてあった活気なんて露ほども感じられなかった。知らない街になっていた。

私の睡眠期はいっそ10年くらいがいいと思う。起きる頃にはこの状況が解決されていたらいい。
それが無理でも、せめて世界が私だけになる前には眠りたい。
孤独がすぐ近くに来ていた。
SF
公開:18/08/01 03:25
更新:18/08/01 09:44

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。

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