戸惑う森

　眼前の二本の木はいつから此処にあったのだろう。ずっとずうっと前から。木皮に積もる苔はその年月を物語っている。

　白、青、黄色。オレンジ、黄緑、緑。段々とピントの合う緑彩色の空間の中、二つの木の間から少しだけ覗く空間に水色の小さな家が見える。ずっと昔から此処にあったのだろうか。つい先程までは無かったような気もするのだけれど、確かにそれはじっと佇んでいる。何かが変だ。何処がおかしいのかは判らない。

　新緑の香りと草いきれ。思えば此処には、同居する筈のない物がそこかしこに溢れている。どうしてこんなにも木が生い茂る場所にあんなにも丈の短い花が咲けるというのだろう。ここには光が溢れている。隙間からの空なんて何処にも見えないというのに。

　私は少し疲れているのかもしれない。軒下のベンチでほんの少しだけ休ませてもらおう。足を踏み出そうとしてやっと私は気が付いた。

　あぁ、私の体が此処には無い。