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私は、放課後の図書室で、ぼんやりと画集を開いていた。すると、誰かが私の真後ろで立ち止まった。私は緊張して、振り向く事も、ページを捲ることもできず、じっと一枚の絵を見つめた。
「北オーストリアの農家」
不意に、自分の頬にぬくもりを感じた。
驚いてそちらをみると、鼻が触れそうなくらい近くに、顔があった。真っ黒に日焼けをした坊主頭の同級生、Nだった。
「な、なによお。なんかよう?」
私は、露骨に椅子を反対側にずらし、体をのけぞらせて言った。
Nはそんな私の動きに何の反応もみせず、じっと絵を見ていた。
「Nって、こういう絵好きなの?」
私はきちんと座り直して、たずねた。Nは、ようやく絵から目を離して、私を見た。そして、
「終活ノートの表紙みたいな絵だなっ」
とだけ叫んで、バタバタと図書室を出ていった。
今、Nの終活ノートを読み終えて、ふと思い出した、小学校五年生の夏の思い出だ。
「北オーストリアの農家」
不意に、自分の頬にぬくもりを感じた。
驚いてそちらをみると、鼻が触れそうなくらい近くに、顔があった。真っ黒に日焼けをした坊主頭の同級生、Nだった。
「な、なによお。なんかよう?」
私は、露骨に椅子を反対側にずらし、体をのけぞらせて言った。
Nはそんな私の動きに何の反応もみせず、じっと絵を見ていた。
「Nって、こういう絵好きなの?」
私はきちんと座り直して、たずねた。Nは、ようやく絵から目を離して、私を見た。そして、
「終活ノートの表紙みたいな絵だなっ」
とだけ叫んで、バタバタと図書室を出ていった。
今、Nの終活ノートを読み終えて、ふと思い出した、小学校五年生の夏の思い出だ。
青春
公開:18/07/31 22:05
更新:18/08/01 08:04
更新:18/08/01 08:04
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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