おとうさん風船

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公園を散歩していると、近くでイベントでもあったのか、黒い風船を持った小さな女の子が向かい側からやってきた。
まだ小学生にもなっていなさそうな少女だというのに、連れはおらず一人のようだった。
親とはぐれてしまったのだろうか。思いながら近寄ると、少女の持つ風船が人の頭のような形をしていることに気がついた。
「おとうさんでつくってもらったの」
硬直する僕を見上げて、少女はにんまりと笑い風船を揺らす。
僕は怖くなってすぐに逃げ出そうとしたが、どういうわけかその場から一ミリも動けなかった。
と、女の子のきた方角から、男が一人走り寄ってくるのが見えた。
「潔子、だめじゃないか、こんなところまで一人できちゃ」
「……おとうさん」
男の注意に、女の子は明らかに不機嫌そうな顔をした。
「すみません、うちの子が」
申し訳なさそうに頭を下げた男は女の子にヘアピンでつつかれ、パァンという音と共に散り散りになった。
ホラー
公開:18/07/31 21:37
更新:18/07/31 23:18

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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