あそ坊の夏

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「あーそーぼ」
僕がゲームでもしようかなって時に、やってくる。
「あそ坊。たまには他のやつと遊べよ」
「他の奴なんて知らん」
「じゃあスマホかゲーム持ってこいよ」
「持っとらん。外へ行こう」
そう言って坊主頭に焼けた顔でニッと笑った。
あそ坊とは、夏休みに入ってから公園で友達になった。それから晴れた日だけやってくる。ヒリヒリする日差しとうざい蝉の声、虫取りしたり、水遊びしたり。汗だくで遊んだ。
その日もあそ坊と僕は、意味もなく、公園にいた。蜻蛉がたくさん飛び始めていた。
「終わりかな」
あそ坊はボソッと呟いた。
「夏休みは明日までだよ」
僕は返した。
次の日は、雨になった。夏休み最後の日なのにあそ坊は来ない。僕はティッシュでてるてる坊主を作る。
お婆ちゃんがそれを見て「おや、日和坊だね」と言った。
いつ間にか雨は止み、急に涼しい風が吹き、空が高く見えた。

あそ坊はもう、やってこなかった。
その他
公開:18/07/31 18:08
更新:19/05/20 18:46

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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