手鏡

4
55

その手鏡は、表面をさっと撫でると別の世界を映した。

小人が働く工場、それが手鏡から見える世界だった。

小人は規則正しく、もくもくと動いていた。

1度目に見たときは、何か会議をしていた。

2度目は材料を運んでいた。

3度目は、何か組み立てられた1部が見えた。

4度目、鏡はその日、普通の鏡に戻ることはなかった。

夜寝ていると、歌声が聞こえた。

目を開けると、小人が顔周りを取り囲んでいる。

360度、歌っている小人。

逃げたいのに、金縛りに合ったように体は動かない。

歌声は音程とメロディが暗くて、心の底から不快だと思った。

「掟よ、私たちを見てしまったのだから」そう言ってその小人は、完成した透明の箱を持ってくる。

気付けば小人は皆針を持っていて、私の顔を一斉に刺した。

…起きたらあの箱の中だった。

「行ってきます。」とよく知る声。

声の先を追うと、そこに私がいた。
ホラー
公開:18/08/01 20:15
更新:18/08/05 21:21

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容