必死のファスナー

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物でパンパンのかばん。いつもファスナーを閉めるのに時間がかかる。

その日もあれやこれやを詰め込みながらファスナーを閉めようとしていた。
突然、ファスナーから水が流れてきた。
「くっ、ま、負けないぞ」どうやら、大汗をかきながら、パンクしそうになるのを必死に堪えているようだ。
『がんばれ~』心の中で応援をしながらも、さらにハンカチを詰め込む。
「うが、無理無理無理。い、いや、ここで諦めたらだめだ、大丈夫、がんばれオレ」ファスナーの声が大きくなる。
『そうか、まだ大丈夫か、じゃ、スマホも入れちゃおうっと』と、スマホを入れようとしたところで
「やめれーーーーー」と叫んでファスナーがパンクした。

ああ、逝っちゃったか。ま、がんばったほうかな。お疲れ。
私は一回り大きなカバンを取り出し、荷物を入れ替えた。

『お疲れ様、いままでありがとね』まだ大汗をかいているファスナーを労り、家を出た。
公開:18/08/01 19:12

いづみ( 東京 )

文章を書くのが大好きです。

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