露出オーバー彼女

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「ねぇ、ここでいいかな」
彼女が僕に尋ねる。別に、僕に断る理由もないのに。鞄からカメラを取り出して、彼女の手に渡す。
「ふふっ、きっと良い写真が撮れると思う」
彼女がシャッターを押す。
カシャッーーーカシャッ
一般的なシャッター音よりも長い音が、彼女のカメラから聞こえる。
彼女は写真を撮るときに、シャッター速度をわざと遅くしていた。なんでって、まぁ、彼女なりの理由がある。
家に帰って、僕はすぐに写真をプリントした。光を取り込みすぎた写真はどれも真っ白だった。
彼女はそれを一通り眺めた後、アルバムにしまう。
「良い写真は撮れたかい」
「うーん、まだまだ、精進が必要だね」
だから、また私を外に連れてってくれる……?
なんて、彼女が言い出す前に
「次はどこに行こうか」
彼女の、遠くを見ているような、焦点の合わない目を見つめて言った。
「君に任せる」
そう言って笑う彼女の目から、一粒の光が溢れた。
恋愛
公開:18/07/31 01:23
更新:18/08/03 21:29

sakana

ショートショート好きです
学生やってます。

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