結局のところはお互いさまで

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真夜中の部屋は手のひらから流れ落ちる深海がひたひたしておる。
「はあー…涼し…きもちい…」
「ここの冷たさは安定だからな」
深海を足で混ぜる柔らかな沈黙。
「…なあお前さ、好きなやつ、いる?」
手の中の海を見つめていた瞳はその問いに顔を上げた。相手の視線は海で遊ぶ足先。
「お前」
「えっまじ」
ざばっと足が跳ね上がった。
「全世界が敵に回っても、世界が滅んでも、なんなら別にいまお前に振られても、いい。夜を魅せて欲しい、いいねそれ、と言ったお前がこの世にいた、それ以上は望まない」
「…なんか、そう想ってくれてんのに、顔から入ってごめん…」
「は?」
「俺さ、お前の顔が好きなの。夜を集めて魅せてくれるお前のとか、落ち着くんだ」
「…好きなやついるかって聞いたのはお前の方だろうが。何でお前が告ってんだよ」
「他に居たら言わないつもりだったんだけど…びっくりして…」
「…」
「…」
「…クソ暑い」
青春
公開:18/07/31 00:31

cross_winter

こちらとあちらをふらふらする辺境歩き、感受性お化けです。SAN値は直葬されています。
雪が好きです。夏は夜ではないと生きられません。にゃあ。

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