ふるさとへの切符

夏休み、旅先のオーストリアで見つけた小さなアンティーク店に入った事が、全ての始まりだった。

・・・当時美大生だった私は、古い額縁に入れられたその小さな絵に釘付けになっていた。

作者もタイトルも不明のその絵は、ヨーロッパのどこかの国らしい、農家の景色を書いたものだった。その風景画に、私は愕然としていた。なぜって、そこに描かれている景色はどう見ても、私の生まれ故郷にある北海道の実家だったのだから。

私の実家の裏庭から見たあの大好きな景色が、まさにその絵画に描かれている。家の色や、木の位置。全てが完全に一致した絵画。
いったいどんな人が描いたのか、なぜそれがオーストリアのアンティーク店に売られているのか、私に知る術はなかった。

私はその絵画に出会って以来、夢中で風景画を描くようになった。
「ふるさとへの切符」という名が付けられた私の個展は今度、故郷の北海道で開催される事になっている。