イメチェンのこぎり

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紗夜と2人でお金を出し合って買ったイメチェンのこぎり。
休み時間は教室の隅っこで好きな本の話をして過ごす地味な私たちは、高校デビューを夢見てワクワクした。
「えーと、『①イメチェンのこぎり(以下のこ)で変えたい部位を切り落とします②外見が変わったらのこを胸に刺し、内面も変えます』」
「なるほど」
「『③最後にのこを振り回します。これで昔のあなたを知る人間との関係は断たれます。生まれ変われます』え?」
私たちは顔を見合わせた。紗夜と友達じゃなくなる。そんなのイヤだ。でも…
突然、紗夜がのこぎりと説明書を私から取り上げて箱に戻した。
「ごめん。由紀と友達じゃなくなるなら私変わりたくない」
いつもおとなしい紗夜の唇がギュッと結ばれた。こうなるとこの子は聞かない。
なんだか知らないけど私と紗夜は泣いて笑った。
紗夜と友達じゃなくなるのは身を切られるぐらい辛いよ、とは思ったけどまだ言えていない。
その他
公開:18/07/30 22:19

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