美しい少女

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有名な画家の作品ばかりを集めたという美術展、そこで私は彼女を見つけたのだ。
友人に誘われて来たものの、そいつはすっかり絵に夢中で私のことなど眼中にない。
芸術というものにてんで疎い私は早々に退屈してしまい、欠伸を噛み殺しながら美しい絵画たちをただ眺めていた。
そんなときだ、彼女を見つけたのは。
美しい金糸の髪をなびかせ、白くしなやかに伸びる足を退屈そうに揺らす姿は、それだけで芸術品といっていい。
「ねぇ君、随分つまらなさそうにしているんだね」
気づけば声をかけていた。静かな室内にその声は不自然に響いたけれど、不思議と誰も注意を向けるものはいない、絵の中の彼女以外は。
『あら、貴方こそ随分と退屈そうじゃない』
緑が生い茂る枝の上から、見下ろすように笑う。
おかしなことに、彼女を認識できているのは私だけのようだった。
あの美しい少女の姿を他の者は見ることができない、それが酷く哀れに思えた。
ファンタジー
公開:18/07/29 17:34
更新:18/08/08 23:28

mono

思いつくまま、気の向くまま。
自分の頭の中から文字がこぼれ落ちてしまわないように、キーボードを叩いて整理整頓するのです。

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