鑑定額3,005,000円

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「壺が出てきましたが、どうしましょう?」
 畑をやめて、アパート経営をするために、地質調査をお願いしていた業者から連絡があった。
「お宝かも!」
 私は現場へ出向き、壺の縁まで詰まっていた砂を掻き出したり、表面の泥をこそげ落としたりして、持ち帰った。
 アパートが完成するころ「お宝鑑定番組」への出場が決まった。
 改めて壺をとりだし、丹念に洗ったり磨いたりして、鑑定の日を迎えた。
 鑑定額300万5千円。私と家族はこの金額に躍り上がった。
「ところで先生、5千円ってなんですか?」
司会の方が尋ねた。
「この壺は大量生産品でね。程度がいいから、まあ5千円くらいはあるかな」
「じゃあ、残りの300万円は?」
「壺の中にわずかに残ったこの砂。これがすばらしい! 今はもうどこからも産出しない幻の釉薬なんです。1グラム単価にしますとね、ざっと120万円…」
 この後の記憶が、私にはない。
その他
公開:18/07/29 14:10

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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