幻覚ベンチ

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ベンチの上で半狂乱になっていた私は、たまたま通った農夫に助けられた。記憶は無い。
「あのベンチはの、座った者に幻覚を見せる代物じゃ」
そんな物が何故こんな森の中に……。
見分け方はあるのか農夫に尋ねた。
「ベンチの脚じゃ。位置が歪だったり、傾いていたりするのう」
壁を正面にした時に脚が傾いているように見えたら、それが幻覚ベンチの証拠だという。
「重要なのは違和感じゃよ。脚の不自然さに気づけば只の普通のベンチなのじゃが」
「今は……只のベンチですね」
「良かろう。まぁ、座らぬ神に祟り無しじゃな」
そう言うと農夫は仕事に戻るといって、森の奥へと消えた。

人の心もベンチの脚も、一度傾いたら中々戻らないものだろう。
何の変哲も無い白藍色のベンチ……あぁ違和感皆無の美しいベンチよ!
疑念を捨て去って、眼前の眩い草木を刮目し、没頭し、執心しよう!!
この森と世界は、こんなにも壮麗なのだから!!!
その他
公開:18/07/28 23:00
更新:18/07/29 00:44

ゴッペ

だいぶ休んでしまいましたが、またちょくちょく投稿できればといいなぁと思います。
コメントもありがとうございます。
どうぞよろしくおねがいします

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