ふりかけ涙味
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きっかけは幼い頃に流した私の涙だった。我が家は貧乏だった。晩御飯が白飯と漬物だけという日は何度もあった。
そんなある日の事。晩御飯の時に「お肉が食べたい」と駄々をこねた私の涙がご飯に落ちた。その瞬間、両親はご飯がキラキラと輝いたのを確かに見たそうだ。私が諦めてご飯を口に運んだ時、奇跡が起きた。鮮烈で複雑な旨味をバランスよく凝縮させた美味が舌から喉へと広がっていったのだ。驚いて両親にそれを告げた。父が私の茶碗へ箸を伸ばし、一口食べて私と同じ顔をした。
「あの涙か!」
父は大発見だと大声で叫んだ。
それから数年後、「ふりかけ涙味」は大ヒット商品となった。私は奇跡の涙少女としてCMに出演した。貧乏な生活を思い出せば涙を流すことは簡単だった。
が、発売から数年後、ふりかけが不味いという苦情が相次いだ。
なんで味が変わったんだろう、と私は首をかしげる。
超高級マンションの一室で夜景を眺めながら。
そんなある日の事。晩御飯の時に「お肉が食べたい」と駄々をこねた私の涙がご飯に落ちた。その瞬間、両親はご飯がキラキラと輝いたのを確かに見たそうだ。私が諦めてご飯を口に運んだ時、奇跡が起きた。鮮烈で複雑な旨味をバランスよく凝縮させた美味が舌から喉へと広がっていったのだ。驚いて両親にそれを告げた。父が私の茶碗へ箸を伸ばし、一口食べて私と同じ顔をした。
「あの涙か!」
父は大発見だと大声で叫んだ。
それから数年後、「ふりかけ涙味」は大ヒット商品となった。私は奇跡の涙少女としてCMに出演した。貧乏な生活を思い出せば涙を流すことは簡単だった。
が、発売から数年後、ふりかけが不味いという苦情が相次いだ。
なんで味が変わったんだろう、と私は首をかしげる。
超高級マンションの一室で夜景を眺めながら。
その他
公開:18/05/17 22:06
更新:18/05/17 23:45
更新:18/05/17 23:45
不思議な言葉
スクー
月の音色リスナーです。
ようやく300作に到達しました。ここまで続けられたのは、田丸先生と、大原さやかさんと、ここで出会えた皆さんのおかげです。月の文学館は通算24回採用。これからも楽しいお話を作っていきます。皆さんよろしくお願いします。
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