人混みの海で泳ぐ人へ

だから南口ン所にいるって言ってん腹減ったなダメじゃないマー君
じっとしてなさい死にたいなあ今何時よ一時半すみませんちょっと
通りますなあ見てみ改札のトコうわきったねえココそこ空いてるん
じゃん座ろあーメンドクセエそういえばさっきそこでおっさんが鼾
ママのどかわいたぁ一時間待ちだってよ何で東口にいんのお前言っ
たじゃんさっきほら危ないっていー加減にしなさい昨日職場で上司
がそういうタイプ本当ウザいお気楽に生きてて羨ましい死のうかな
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「時々は息継ぎしないと溺れるよ」

駅の外へ出た後すぐに、私は空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
青と橙が半々に色づいた夕空の下は少し肌寒く、雨の匂いもした。

人と声と匂いの混ざり合った駅構内はまるで海水浴シーズン後のゴミが散乱した海のような汚れ具合だった。

改札を抜ける手前ではっきりと聞こえた声の主は、人混みに紛れて去ったかもう見つけられなかった。