笑って笑って

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どうすれば彼女を笑わせることができるのだろう。流行りのお笑い芸人をみても、話題の動画をみてもにこりとしない。
彼女は最近恋人に振られてしまったから悲しくて寂しくて笑えなくなってしまった。恋人を思い出しては泣き、泣き疲れた目をしょぼしょぼさせて、目の下にはクマもできていた。
嘘でもいい。なんとか笑ってもらわないとやりきれない。
私は途方にくれた。
ある日、友人から「猫を飼わないか」と持ちかけられた。
「猫を保護したんだけど、うちで飼い続けるのはちょっと難しくて。飼いたがってたでしょう。最近元気ないみたいだからこの機会にどうかな」
私は二つ返事で承諾した。
必要なものを買い揃えてから猫を引き取った。猫は部屋の中をせわしなく駆け回り、餌をもりもりと食べ、猫用ベッドではなくその時々で暖かい所を探して寝た。私は柔らかく毛が上下する腹を撫でた。ふと鏡を見る。鏡の中の彼女は笑っていた。私はやっと笑った。
その他
公開:18/05/17 19:25

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

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