ゆめみ不動産

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“こちら夢売る ゆめみ不動産”
いつもの帰り道に見慣れぬ看板を見つけ、好奇心をくすぐられた俺は迷わずドアを引いてしまった。
「いらっしゃいませ。ここはお客様の安眠をお助けする店でございます。」
そう言って、店主は物件を俺に見せてくれた。
故人に会える夢…。宇宙旅行をする夢…。どれもすごく魅力的だった。
「お客様はどんな物件をお探しですか?」
「俺は…」

その夜、俺は夢を見た。ゆめみ不動産から買った通りの夢だった。小学生のころに初めて恋をしたあの子の夢だった。目覚める直前にあの子が大人になった姿が浮かんだ。それを見た俺ははっとした。
なぜなら、それは今付き合っている彼女だったのだ!
運命的なものを感じ、すぐさま、彼女に電話をすると…驚く声が聞こえた。そして、彼女は言った。
「あのね、私もゆめみ不動産から夢を買ったんだけどね…。おばあちゃんになった私があなたの隣で笑ってたの!」
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公開:18/05/17 13:13

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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