デコちゃん

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その日、田舎のおじいちゃんちは朝から大勢の人が出入りしていた。
お昼ご飯のあと僕は一人で海に来た。
誰も居ない砂浜に打ち上げられたクラゲを見つけてしゃがんだ時「触ったらアカン」と声がした。僕と同い年くらいの男の子だ。
「知ってる。おじいちゃんが言ってたもん」
僕が立ち上がってクラゲから離れると、男の子は坊主頭の日焼け顔でニカッと笑った。前歯が一本無い。僕も生えかけの永久歯を見せて笑った。
「僕、ゆうき」
「俺、デコ」
そう言うと男の子は自分の額をペチッと叩いた。

僕らは夕暮れまで二人で遊んだ。別れ際「デコちゃん明日も遊ぼうね」と背中に声を掛けるとデコちゃんは振り向いてニカッと笑い、何も言わずに走って行った。

夜、おじいちゃんの幼馴染の厳さんが家に来た。
「今年もゆうき君と遊んでやるんやて言うてたのにな」
濡れた目で僕に言い、仏壇に向き直る。
「お前の初盆て未だに信じられんわ。なぁデコ」
ファンタジー
公開:18/05/17 12:46
更新:18/05/17 16:30

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