小鬼

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その小鬼はちょくちょく僕の前に現れて、他愛のない悪戯をするのだが、小学生の僕にとっては、大問題なのだ。
 学校からのプリントをゴミ箱に捨てる、テスト中に消しゴムを隠す、飲みかけのジュースを洗ったばかりの服にこぼす。お陰で最近母さんに怒られっぱなしだ。
一番やっかいなのは、どうやら僕にしか小鬼は見えないってこと。
 今朝も出かけようとする母さんの靴を小鬼が隠した。なんと玄関の入り口にある植木鉢の中で見つかり、僕がいたずらしたと思っている母さんはカンカンだ。これはもう、正直に話そう。
 「違うんだ母さん。見えないかもしれないけど、僕のそばにずっと悪い小鬼がいて、悪戯をするんだよ。」
すると母さんは驚き、下を向いた。
「そうなの。母さんも違うのよ。私は怒ってないの。母さんに悪い鬼が取り憑いてるのよ」
そう言って顔上げた母さんの頭には、尖った角が生え、横に裂けた口から、鋭い牙が見えた。
ホラー
公開:18/05/17 11:53

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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