見積依頼

プルルルル。

「はい、あなたの街の引越社でございます」

「もしもし、見積もりをお願いしたいんだけど」
「はい、お電話ですと概算になりますが、よろしいですか？」
「はい」
「ではまず、現在のご住所をお願いします」
「『田舎県とんでもない離島』です」
「お引越し先は同じ島内ですか？」
「いえ、島外です」
「それですと、お荷物を運ぶのが船便になります」
「あ、それは大丈夫ですが…。船で運べますかね？」
「え？何か大きなお荷物でも」
「滑走路が一本」

「は？滑　走　路　ですか？」
「ええ、今使っている滑走路に愛着があるので持っていきたいんです」
「失礼ですが、お客様は…」
「離島空港です。今、空港を離発着する便は週に1便しかないんです。全く私の能力を生かし切れていないと思うんです。それで、能力を最大限発揮できる所に引っ越したいと思いまして」
「申し訳ございません。滑走路は」

春だなぁ。