青と青とときどき金色

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海がきれい。
そんなことどうだっていい。

「あなたはどこからきたの?」
「海の見える街から」
「ばかね。ここからだって海は見えるわ」
「そうだね。じゃあここも海の見える街だね」
「海きれいだね」
青い瞳の彼女は呟くように言った。
浜辺の砂が波に攫われていく。
独り言か判断がつかなかった僕は曖昧に「そうだね」とだけ返した。

彼女が波に攫われたのはそれから数ヶ月後のことだった。
僕たちは何度かこの“人がいない秘密めいたままの浜辺”で会ってはくだらない話をした。
僕の母国のこと、彼女が住む街のこと。

今になって思うことがあるんだ。
これが初恋だったのかなって。
好きだって伝えたかった。

海が綺麗。
そんなことどうだっていい。

でも、綺麗な金色の髪に青い瞳の君が言うんだから、この海はよっぽど綺麗なんだね。

「この海は君と同じくらい綺麗だよー」
僕は大人になりきれない小さな身体で叫んだ。
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公開:18/05/18 17:13

oto( 茨城 )

Otoです。
ショートショートは全く造詣がなく拙い文になりがちですが、めげずに読んでいただけるとありがたいです。
よろしくお願いします!

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