海の記憶
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海はずっと友達だった。家に帰っても誰もいないときは、話し相手になってくれた。学校に馴染めなかったときは、悩みを聞いてくれた。落ち込んだ時はきれいな波の音を聞かせてくれた。時々、海は荒れて機嫌が悪くなったりもしたけれど、概ねいつも穏やかで優しかった。
あの日、大きな大きな地震が起きて、大きな津波とともに海は町を飲み込んでしまった。私は呆然と立ち尽くし、海がごめんよ、ごめんよと大声で泣きながらたくさんのモノを飲み込んでいくのを見ていた。
許せなかった。ずっと信頼して大好きだった海は一瞬にして一番に憎むべき相手になった。大嫌いだ。
私は壊れてしまった町を離れることにした。大嫌いになった海を振り返る。
うなだれていた海が、何かを言いかけて大きく瞬きし、グワーッと口を開けた。と、轟音とともに、巨大な蛤が現れ霧のような気を吐いた。
目の前がぐらりと歪み、生まれ育った懐かしい町が広がった。
あの日、大きな大きな地震が起きて、大きな津波とともに海は町を飲み込んでしまった。私は呆然と立ち尽くし、海がごめんよ、ごめんよと大声で泣きながらたくさんのモノを飲み込んでいくのを見ていた。
許せなかった。ずっと信頼して大好きだった海は一瞬にして一番に憎むべき相手になった。大嫌いだ。
私は壊れてしまった町を離れることにした。大嫌いになった海を振り返る。
うなだれていた海が、何かを言いかけて大きく瞬きし、グワーッと口を開けた。と、轟音とともに、巨大な蛤が現れ霧のような気を吐いた。
目の前がぐらりと歪み、生まれ育った懐かしい町が広がった。
ファンタジー
公開:18/05/18 14:24
更新:18/05/31 00:23
更新:18/05/31 00:23
人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。
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