月の光

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優は昔、悲嘆に暮れていた。
なぜ僕は小学校の友達みたいに元気な体じゃないのだろうと。病院での夜は疲れてため息をつくことも多かった。入退院を繰り返す中、南向きの窓際のベッドに落ち着くことになった。眠れない夜、窓から差し込む月明かりが優しかった。月の見える夜はため息が減った。
優はゲームを遊ぶ元気が無くなっていった。母に頼んで買ってもらった天体図鑑のページを時々めくる。誰もいない時、傍らの天体図鑑が心強かった。いつしか天体図鑑も開くのも億劫になってきた。昼の眩しい太陽よりも夜の静かな優しい光が待ち遠しくなった。月の優しい光が優を優しく包む。全身の力が抜けていく。

幾晩か過ぎた日のこと、優は処方箋の力を借りていつものように夢の世界に入る。美しく輝く月に見守られながら。
ふと体が軽くなったのを感じた。
優は窓辺に立った。
そして優は光振りまきながら空を飛んでいく。果てしなく優しく光る月の元へと。
その他
公開:18/05/16 18:58

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

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