時計逢わせ。

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トキの眼前には時計草が咲き乱れている。

時計草はその名の通り、時計の様な姿形で、奇妙だが美しい花だ。
もう半世紀も前、嫁いで来た頃に庭へ植えたのだ。
梅雨から夏に咲き、繁殖力が強いので、まめな手入れが必要だ。
群れの中の一輪に手を伸ばし、花芯に触れたらぐらぐらするので、何気なく逆時計廻りに動かした刹那、ぐらりと目が回りトキは気を失った。

「……!……トキさん!大丈夫ですか?」
 若い男が心配そうにトキの顔を覗き込んでいた。
──この人は……。
 夭折した夫が目の前に居る。トキは庭に面した部屋に横たわっていた。
半身を起こし、鏡台で我が身を見ると艶やかな浴衣を着た、若い自分が映った。
「似合いますね」
夫はそう言い、恥ずかしそうにトキに手を差し伸べた。
「そろそろ、参りましょうか」
──ああ。私、この人とまた、歩んで逝けるのね……。

トキは微笑むと、夫の手をとりゆっくりと立ち上がった。
ファンタジー
公開:18/05/16 01:02

椿あやか( 猫町。 )

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