防波堤の過ち

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「防波堤を壊せばどこにも帰られぬぞ。波止の精は堤防にしか憑けぬのだ」
海の精は言った。
「かまいません。もう一度あの人に会いたいのです。私を解き放ってください」

波止の精はある青年に恋をしていた。彼はよくこの場所に釣りに来ていた。彼と過ごす時間は幸福だった。
けれどある日、青年は堤防の石壁にこんなことを書きつけた。
──さよなら故郷の島。僕は街に出ます。立派になって帰ってきます。
波止の精はまだ幼かった。彼を待つことができないのである。
「海の精よ、私は自分の役割が憎い。どうして私は防波堤なのでしょう。彼の身に付ける物の精霊たちが羨ましい」
海はついに受諾した。堤防を壊せば精霊は解き放たれる。精霊が役割を放棄したものを壊すのは容易いことだった。その夜、島を津波が洗った。解き放たれた精霊は、夜のあいだ青年を探したが、見つからなかった。
翌朝、潮が引いた島に、横たわる彼の亡骸があった。
ファンタジー
公開:18/05/17 09:21
精霊

射矢らた( 大阪南船場 )

2018年2月8日SSG登録
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<三姉妹シリーズ>
親もとを離れて暮らす三姉妹の暮らしを
ショートショートで綴ります。
長女・葵(あおい) 社会人
次女・茜(あかね) 高校生
三女・翠(みどり) 小学生

そのほか1話モノも書きます!
 

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