幻想動物見聞録・勝己の場合

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古びたピーマンを台所で調理していましたらね、中から覗いてきたんです。虫じゃなくて、女の子。ヘタをくり抜くと、困惑した顔でこちらを見上げていました。私はびっくりして言葉を無くしました。
「私はピーマンの成分です。このまま調理をしてください」
彼女は私に懇願しました。私にはとても切り刻むことができません。しかし、彼女はどんどん弱っていきました。古びたピーマンの旨味成分が、抜けていくのでしょう。
私は意を決して、そのまま鍋に放り込みました。彼女は、ありがとう、と呟いてそれっきりです。その日のポトフは、少し苦かった。新鮮なうちに、いや、せめてちゃんと芯を抜いていたら、美味しく食べてあげれたでしょうか。

あれから私は食材を無駄にできなくなりました。コンビニのチキンだって安売りの野菜だって、美味しく頂かれるために産まれて育まれ、死んでいくのだから。

先生。
人間って、つい忘れてしまう生き物ですね。
ファンタジー
公開:18/05/17 07:09
更新:18/05/17 08:53
大人の食育 幻想動物見聞録 ひょっとしてホラー

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。

いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

同じ名前でツイッターやってます!
写真は全て自前でやっています(笑)

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