新婚さんごっこ
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夫婦の距離は年月を重ねるごとに開いていく。私は変わってない。遠ざかったのは妻だ。
昔は家事は文句も言わず一人で全てこなしていた。笑顔で茶も淹れた。会社に行く前にネクタイを締めた。ちゃんと結べるまで私はよく目を閉じて待った。
ところが今の妻は何か頼むと素っ気ない返事をする。出かけると中々帰らない。食事には惣菜が並んだ。たかが二人分の洗濯物を片付けない。昔なら手を上げた。今は年でそんな気力もない。散らかった部屋で、一人冷めた茶を飲んだ。
目がさめると久し振りに味噌汁の香りがして、部屋は綺麗に片付いていた。妻と談笑しながら朝食をとる。定年退職の日に妻は昔に戻った。明日から二人きりで新婚生活のやり直しができるのだ。
「あなた、ネクタイを締めますね」妻は晴れやかな笑顔で言う。私は目を閉じる。
「今日までお疲れ様でした、私」
ネクタイは首を異常に締め上げた。意識も、妻の高笑いも徐々に遠のいていく。
昔は家事は文句も言わず一人で全てこなしていた。笑顔で茶も淹れた。会社に行く前にネクタイを締めた。ちゃんと結べるまで私はよく目を閉じて待った。
ところが今の妻は何か頼むと素っ気ない返事をする。出かけると中々帰らない。食事には惣菜が並んだ。たかが二人分の洗濯物を片付けない。昔なら手を上げた。今は年でそんな気力もない。散らかった部屋で、一人冷めた茶を飲んだ。
目がさめると久し振りに味噌汁の香りがして、部屋は綺麗に片付いていた。妻と談笑しながら朝食をとる。定年退職の日に妻は昔に戻った。明日から二人きりで新婚生活のやり直しができるのだ。
「あなた、ネクタイを締めますね」妻は晴れやかな笑顔で言う。私は目を閉じる。
「今日までお疲れ様でした、私」
ネクタイは首を異常に締め上げた。意識も、妻の高笑いも徐々に遠のいていく。
その他
公開:18/05/16 21:26
読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。
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