喧嘩の質流れ

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僕の家の近くには、小さな質屋がある。そこで売っている質流れ品には不思議な物が多くあり、見ているだけでとても楽しい。
しかし今日のそれは、一段と奇妙な物だった。
七割引という札が付いて売られているその質流れ品には、雑な字で『喧嘩』と書いてある。
「ボク、その喧嘩買うかい?」
いつのまにか隣に来ていた店主が、僕に笑いかける。
「前に質入れされた喧嘩なんだ。俺に吹っ掛けてくるから、受けてやったのさ」
流れたけどなあ。言いながら、店主は大きく笑った。その瞬間。店の戸が大きな音をたてて開き、一人の大柄な男が入ってきた。
「おいジジイ! てめえオレの喧嘩売りやがったな!」
男は入るなり、僕の手から七割引の喧嘩をもぎ取った。そして代金を叩きつけると、来たときの勢いそのままに、店を出て行った。
店主は呆気にとられるボクを見て、
「あのテはね、売られたら買わなきゃ気がすまないのさ」
と笑った。
その他
公開:18/05/14 19:14
更新:18/05/16 23:43

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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