じいちゃんのラジオ

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じいちゃんが私に遺したのは、じいちゃんが愛用していた古いラジオだった。
ある夜、いつものようにラジオを聴きながら布団に入っていると、ラジオをつけたまま眠ってしまった。
朝になり目覚めた時、私はうっかりしてしまったことを思い出した。
しかし、ラジオの電源は切られ、アンテナもしまわれていた。
不思議に思ったが父か母が片付けてくれたのか、と思い、両親に問うがふたりとも違うと言う。私は一度寝たら、朝まで起きないタイプだし…。いったい誰が片付けたのだろう。
その日の夜、夢を見た。じいちゃんの夢だった。じいちゃんは私に優しく言った。
「もう大学生なんだから、ラジオくらい自分でしまえるようになりなさいよ」
言ったあとでニヤッとする癖はあの時のままだった。
“じいちゃんがしまってくれたのかな”
そうだったらいいな、を込めて今日もラジオと共に夜を過ごす。
その他
公開:18/05/15 22:43
更新:18/05/15 22:49

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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