海の飴

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山里に出張した時のこと。ひと仕事終えて初夏の新緑を眺めながら歩いていると、古びた土産物商店で『海の飴』と書かれた幟を見つけた。
こんな山奥で?
塩っぱいのか?と熱中症予防の飴を連想した。
老婆が店番をしていた。
「あの…海の飴って…」
「あー飴ね、どの海にします?」
…どの海?
どうやら種類があるらしく、一粒ごとに地名が書かれてある。
有明、瀬戸、遠州、常陸、津軽…
「富山はありますか?」
僕は富山湾の近くで生まれた育ったのだ。
それは一見するとただの飴で白く濁った硝子のような色。白海老の味でもするのかな?と口に放り込んでみると普通に甘かった。
でもなんだか懐かしい気持ちで一杯に満たされていく。
そして幻覚だろうか…
目前に無数に広がっていく光は穏やかな夜の海辺に漂う蛍烏賊の群れ。

そういえばここ数年忙しくてしばらく帰省してなかったな…
母は兄は元気だろうか…
今年の夏は父の墓参りだな。
ファンタジー
公開:18/05/15 18:12

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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