赤い糸売ります。

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 僕がその店を訪ねたのはちょうど一年前のことだった。
 その店のドアを押し開けると、柔らかな老店主の声が僕を迎え入れた。
 「いらっしゃい。何をお探しで?」
 「いや、友人に勧められて…この店は何を売る店なんですか?」
 「ここは“赤い糸”を売る店ですよ」
 「あ、赤い糸ですか?」
 「はい。この店は、お客様が運命の人と巡り会えるようにと、“赤い糸”を販売しております。ご購入されますか?」
 せっかくなら…と僕は買うことにした。
代金を払うと、店主は赤い糸を僕の薬指にはめた。僕は半信半疑のまま、店をあとにした。




 それから数ヶ月後。
 不意に出会いは訪れた。ある女性とすれ違ったとき、糸がぐっと引かれた。振り返ると、女性の薬指に僕の“赤い糸”が絡み付き、女性は頬を染めていた。
 そして、僕は赤い糸が引かれるように、女性に惹かれ…めでたく、固く結ばれたのだった。
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公開:18/05/15 16:16
更新:20/10/10 21:40
ふたりを紡ぐ 赤い糸 これからの生活

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



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