最後の我儘

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季節外れの海で別れ話をした。
最後の我儘に一緒に城を作りたいと言ってみた。
優しい貴方は波の音を聞きながら一所懸命に砂の城を築き、今度は並んでそれが少しずつ波に攫われ崩れていく様を眺めた。
まるで私たちの恋を見ているようでしょう。
切ないでしょう。儚いでしょう。
貴方は「ごめんね」とだけ言った。
どうして?城が崩れ去る前に「やり直そう」と言って欲しいのに、貴方はずっと同じ言葉を繰り返す。
「ごめんね」
「ごめんね」
やがて城がただの砂に還っても、貴方の返事は変わらなかった。
「ごめんね」
ゼンマイ仕掛けの人形のように、ただ繰り返す。
どうやら本当に壊れてしまったらしい。
だとしたらもう終わりだ。
「さようなら」
最後の悲しみが溜息になって消える。
私は貴方で赤く汚れた流木を海へ流すと、スカートの砂を払ってサンダルを履き、国道からバスに乗った。
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公開:18/05/15 14:15

堀真潮

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