拈華微笑

蜘蛛の糸を辿って登り詰めたここは？蓮の花弁の上だ．俺だけじゃない．あのカンダタとかいう奴と，100名ぐらいか．あぁ，お釈迦様，カンダタ一人どこへ．お釈迦様の声だ．天の声という奴か．カンダタは犬として生まれ変わるらしい．畜生道だな，地獄よりはましだ．ありがたや，ありがたや．彼は救われたな．次は誰だろうか，何はともあれ，俺も救われるのだ．俺も畜生道に？犬は嫌だな，それは贅沢か．蜘蛛を助けただけでも犬になれたんだ．俺だって犬くらい，いや人間になることもできるだろう．高望みしすぎか．ちょっと遅いな，もし人間になれたら真人間になろう．美人と結婚して金持ちになるんだ．それにしてもここはお腹が空くな．蓮の実でも探すか．喉が渇くな，水面まで降りるか．もう待てないな．おや？

暫くしてお釈迦様はそっと花をひねり亡者を水面に降ろすと微笑まれました．こうして欲深い亡者たちは餓鬼道へ導かれるのです．