続・海の浸水

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あの日から、私はコウジと一緒に過ごすようになった。
彼との仲は急速に進み、二週間後にはゴールイン。彼と一緒になってからの私は人に優しくなり、塩辛さも随分とまろやかになった。
コウジは元々フリーでライフカウンセラーをしていたので、コウジと出会う前に失職していた私はその仕事を手伝うようになった。
まろやかにはなったものの基本塩対応のままの私は、はじめ他人と接するのを躊躇ったが、そんな私の心配は杞憂に終わり、私達の相談所はすぐに大評判となった。
不思議なことに私達のところに来ると、憎み合っている夫婦の関係は柔らかくなり、疲弊した人は心身をリラックスできるのだという。私の塩加減もなぜだか好評だった。

私は結婚後も定期的に夜の海へ出向き、静かに海を取り込んだ。新鮮な海水が心に染み込んでいく度、コウジとの関係は新たに築かれ、また熟成される。

誰かと一つになる。そう思えば、浸水するのも悪くはない。
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公開:18/05/10 20:12
更新:18/05/24 18:19
海の浸水

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

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