海月の怪(旧:海月の囁き)

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ある晩。小さな舟に搖られ乍ら男が獨り夜釣りを樂しんでゐた。
波間にはかたちのよい海月が二匹、仄白く光り搖蕩つてゐた。

──否。それは仰向けに漂ふ女の白い乳房であつた。
臍から下は海に潛つてゐる。目も口もぽかりと開いた儘である。水屍躰にしては美しい。氣を失つてゐるのなら、助けねばならぬ──。
男はゆつくりと女に舟を近づけ「かはいさうに」と獨り言た。
手首を掴んだ刹那、女の眼がキロリと動き、男を射拔いた。
驚いて思はず手を離したが、女は身を飜し男の兩肩をぐつと掴むと、
口をパクパクと動かし、何事かを告げた。さうして、にいつと嗤うと彈けるやうに海中へ潛つて行つた。

女の下半身は、魚のやうであつた。

男は暫し茫然と海面を見つめてゐたが、女の言葉を悟ると猛然と陸へ向かつて漕ぎ出した。

ある海邊の村が獨りの男を除き、一夜にして魔のものに飮まれ、消えた。と云ふ話が今も殘されてゐる。
ホラー
公開:18/05/11 19:16

椿あやか( 猫町。 )

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