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『墓なんぞはいらない。死んでからの入れ物に金なんてかけるな』
これは生きている間の、私の口癖だった。
「どうかされました? あとは転居先をこちらにご記入頂くだけですが」
差し出された紙には、前住所として私が生前住んでいた家の住所が記入されている。
戸惑う私に担当者は怪訝な顔を向けた後、はたと思い至ったように手を打った。
「さてはあなた、墓はいらないなんて言って死んだクチでしょう。最近多いんですよねえ。申し訳ないですが、墓所がないと転居の手続きはできないんですよ。窓口⑥番に並び直してください」
言いながら、担当者はドンと先程の紙にゴム印を押す。そこには赤い字で「墓所不定」と表示されている。
指定された⑥番窓口の前では、段ボールと新聞を渡された死人たちが長々と炊き出しの列を作っていた。
せめて永代供養墓くらいは頼めば良かった。
団地暮らしに夢を馳せながら、私は列の最後尾へと足を向けた。
これは生きている間の、私の口癖だった。
「どうかされました? あとは転居先をこちらにご記入頂くだけですが」
差し出された紙には、前住所として私が生前住んでいた家の住所が記入されている。
戸惑う私に担当者は怪訝な顔を向けた後、はたと思い至ったように手を打った。
「さてはあなた、墓はいらないなんて言って死んだクチでしょう。最近多いんですよねえ。申し訳ないですが、墓所がないと転居の手続きはできないんですよ。窓口⑥番に並び直してください」
言いながら、担当者はドンと先程の紙にゴム印を押す。そこには赤い字で「墓所不定」と表示されている。
指定された⑥番窓口の前では、段ボールと新聞を渡された死人たちが長々と炊き出しの列を作っていた。
せめて永代供養墓くらいは頼めば良かった。
団地暮らしに夢を馳せながら、私は列の最後尾へと足を向けた。
ファンタジー
公開:18/05/11 19:03
更新:18/05/21 21:19
更新:18/05/21 21:19
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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