置いてきぼり
2
139
ブラックインクの海に砕いたガラスを撒いたみたいに、
夜空の星がジャリジャリと瞬く。
その中のひとつが、不意にふるふると揺れた。
ハッとして思わず両手を広げる。
こぼれ落ちて来た星を懐に受け止めると、鋭い痛みが走った。
私は胸をおさえその場にうずくまる。
……るーん……、るーん……。
やがて耳の奥で、水をはったグラスの縁を、指でなぞったような音が鳴り始めた。
るーん、るーん、るらーん……。
音は重なり、どんどんふくらんでゆく。
星々の奏でる音楽にこの身がほどけ、
彼らと混ざり合った気がして、私は痛みを忘れた。
この星、連れて帰ろう。
そう思った瞬間、痛みが鮮烈に蘇った。
懐をのぞき込むと、星は怒ったように閃光を放ちプイッと空へ帰って行った。
立ち尽くす私に胸の傷だけ残して。
指先をぺろりと舐めて傷に滲んだ血を拭う。
こんなもの唾つけときゃ治るんだ、
と、多分涙声の私が言った。
夜空の星がジャリジャリと瞬く。
その中のひとつが、不意にふるふると揺れた。
ハッとして思わず両手を広げる。
こぼれ落ちて来た星を懐に受け止めると、鋭い痛みが走った。
私は胸をおさえその場にうずくまる。
……るーん……、るーん……。
やがて耳の奥で、水をはったグラスの縁を、指でなぞったような音が鳴り始めた。
るーん、るーん、るらーん……。
音は重なり、どんどんふくらんでゆく。
星々の奏でる音楽にこの身がほどけ、
彼らと混ざり合った気がして、私は痛みを忘れた。
この星、連れて帰ろう。
そう思った瞬間、痛みが鮮烈に蘇った。
懐をのぞき込むと、星は怒ったように閃光を放ちプイッと空へ帰って行った。
立ち尽くす私に胸の傷だけ残して。
指先をぺろりと舐めて傷に滲んだ血を拭う。
こんなもの唾つけときゃ治るんだ、
と、多分涙声の私が言った。
ファンタジー
公開:18/05/10 23:49
ログインするとコメントを投稿できます