万引きカメレオン

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近所の雑貨店内を彷徨いていた折、なかなか可愛らしいキーホルダーを見付けて足を止めた。
散歩のついでに覗いてみたというだけなので鞄も財布も持参しておらず、手元には一銭もない。
財布を取りに帰ってまた戻っても、その頃には他の客に取られているかもしれない。

──どうしても今これが欲しい。
そう強く思った途端、生白い腕が口の中から勢いよく飛び出した。

腕はカメレオンの舌の如く滑らかに動き、五本の指でキーホルダーをがっしと掴むと、再び口内へしゅるんと戻っていった。
舌の上にひやりと硬い獲物を載せたまま、何食わぬ顔を装った私はそのまま店を出た。

少し歩いた先で肩を掴まれて振り向くと、先程レジを打っていた店員が息荒く背後に立っている。
おっかない顔で睨み付けてくる店員に気圧され、観念した私は舌先に載せていた獲物をべろりと吐き出し、頭を下げた。

「すみません。喉から手が出る程欲しかったもので……」
ファンタジー
公開:18/05/08 19:30
更新:18/05/08 22:18

甘党めぢろ( お休み中。 )

色々疲れたのでお休み中。ここは跡地になりました。

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※小説の表紙はフリーの写真素材配布サイト「写真AC」よりお借りしてます。
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