海びこ

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「好きだっ、付き合ってくれ」
貴方は海へ向かって大声で叫んだ。
唐突な告白に私は思わず貝殻で足を切ってしまった。
「海びこって知ってるか?」
「山びこじゃなくて?」
「いいや、海びこ。海は山よりずっと大きいからさ、俺の声が返ってくるのに十分かかる。その時に俺、怜子に告白しようと思う」
持っていた浮き輪を強く握る。空気が抜けていくのがわかる。
怜子が三人分のラムネ瓶を持って駆けてくるのが見えたから、私は海へ逃げ込んだ。足の傷口に海水が染み入る。それでも沖へむかってただ手を伸ばす。随分遠くまで来たところで浮き輪の空気が無くなってしまった。
少しずつ沈む身体を最期に水面に持ち上げて、貴方の名前を叫んだ。
「好きだっ、付き合ってくれ」
海の向こうから届いた、貴方そっくりな海鳴りに私の声は搔き消された。
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公開:18/05/09 08:45

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