おらほの海

2
141

春、カカシの俺が立つ畑にツバメがやってきた。巣の材料のためにと俺を突っついてきたが、お詫びに渡り鳥の旅の話をしてくれたので許してやった。中でも俺は海ってやつの話に興味を惹かれた。
「海は大きな水たまりです。池や川より大きい。ざあざあという波、潮の独特な匂い。水は塩辛いが魚がうじゃうじゃいます。鳥でもカモメやウミネコなんて鳴き声が面白い。旅は大変ですが、海を渡るのはとても楽しゅうございました」
「へえ。一度でいいから拝んでみたいもんだ」
とはいえ俺は動けないし仕事がある。俺はツバメの話を何度も思い返しては海を夢想した。ざあざあという波、独特な匂い。たくさんの生き物…。
夏、俺は田んぼに部署移動となった。広大な土地に立たされ田んぼを見守る。
土と草の匂いの混じった強い風が吹いた。ざあざあ。風に揺れて色を変える稲。トンビやカラスが飛び、昼はセミ、夜はカエルが鳴いた。

俺が思い描いた海だった。
その他
公開:18/05/09 00:44

砂塵

読んでいただきありがとうございます。
話のおもしろさ云々はひとまず置いといて、とりあえず一本完結させることを重視して書いてます。
朗読ラジオ「月の音色リスナー」です(^o^)/
低浮上中なのでコメント返し遅れるかもですが必ずお返しします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容