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私の祖母は染め物職人だった。
その腕は素晴らしく、藍染めは一級品と謳われた。祖母の手で染め上げられた布は、いつもどんな紺屋にも負けない輝きを放ち、神々しさすら纏っていた。
公には知られていないが、染め物を生業とする人のうち、ごく限られた職人の手から生まれる草木染めは、空の色を染め上げる役目を担っている。祖母は、その一握りの職人だった。
その幻想的な光景を、今でも覚えている。清流で洗い流したばかりの染め物を祖母の皺深い優しい手が柔らかに広げると、日を受けた布はうっすらと輝き、端からゆっくりと空に溶けていった。
私は夏の突き抜けるような青や秋のすすけた蒼、様々な時に祖母の染めた空と出会った。空には他の職人のたくさんの色が広がるけれど、私はいつだって祖母の藍だけは見分けることができた。
時が流れて祖母を失った今、日の差す時間が過ぎても暮れればまた現れる祖母の藍を見上げて、あの優しい掌を思い出す。
その腕は素晴らしく、藍染めは一級品と謳われた。祖母の手で染め上げられた布は、いつもどんな紺屋にも負けない輝きを放ち、神々しさすら纏っていた。
公には知られていないが、染め物を生業とする人のうち、ごく限られた職人の手から生まれる草木染めは、空の色を染め上げる役目を担っている。祖母は、その一握りの職人だった。
その幻想的な光景を、今でも覚えている。清流で洗い流したばかりの染め物を祖母の皺深い優しい手が柔らかに広げると、日を受けた布はうっすらと輝き、端からゆっくりと空に溶けていった。
私は夏の突き抜けるような青や秋のすすけた蒼、様々な時に祖母の染めた空と出会った。空には他の職人のたくさんの色が広がるけれど、私はいつだって祖母の藍だけは見分けることができた。
時が流れて祖母を失った今、日の差す時間が過ぎても暮れればまた現れる祖母の藍を見上げて、あの優しい掌を思い出す。
ファンタジー
公開:18/05/07 22:08
更新:18/05/07 22:14
更新:18/05/07 22:14
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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