髪の伸びる日本人形－その後

その寺には全国から髪の伸びる日本人形が集められていた。
多くの人が不気味だという、その日本人形をここの住職は喜んで迎え入れた。
住職はやって来た人形達に数冊の本を見せる。ヘアカタログだ。
「この中で気に入った髪型があれば、そのページまで髪を伸ばすといい」
人形達はするりするりと髪を伸ばす。そして、いかにもこうして欲しいと言わんばかりに髪でしてほしい髪型に丸印をつける。
それを確認すると住職は人形を理髪室に連れていく。目の前には大きな鏡。人間さながらに人形の髪をカットしていく。
「完成。これでどうかな？」
人形は心なしか満足しているようだ。
実はこの住職、元カリスマ美容師である。
人間関係に疲れ、それでも美容師としての道を捨てられず、悩んだ末見つけたのがこの道だった。
住職は今、幸せだった。
ただ一つ、悩みがあるとすれば日本人形達に新たな未練が生まれ、なかなか成仏してくれなくなったことだ。