傍らの人②─走れメロス

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メロスったら、また怒ってる。
今回は王の所業にご立腹。まあ確かに、あまり良い噂は聞かないけどさ。
「私は猛烈に怒っている!」
「そうか」
「なので、今から王を暗殺に行く!」
そりゃまずいよ、と忠告する間も無くもう居ない。
あいつ昔から激情型なんだよな。
心配してたらやっぱり捕まった。死刑になるのはメロスの自業自得だけどさ、なぜぼくも捕まるの?
「三日のうちに戻らねば此奴の首をはねる!」
「どうぞお好きになさい!」
ああ、ぼくの拒否権ないまま人質にされてるし!
「妹の結婚式に出たら、必ず戻る」
「そうか」

で、ハラハラしたけれど、間一髪でメロスは帰ってきた。
「よく戻った。余は感激した!」
王も改心し、ぼくらの罪も許されて大円団の酒宴のなかで、「そういえば、メロスって粘着質な奴だったなぁ」という事を思い出した。
安心し切っている王の背後から、短剣を振り下ろすメロスの姿が見えた──。
ホラー
公開:18/05/04 15:48
更新:18/09/17 15:41
走れメロス 激情型 粘着質 太宰治

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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