渚の灯

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渚との別れを予感した夜。俺は部屋にこもりパソコンのキーを叩き続けた。

朝。渚を故郷の海に招待した。
それが最後なのかもしれない。

スキューバダイビングで熱帯魚たちと戯れ、イルカたちと遊泳する渚に、笑顔が戻った。

海が夕日で煌めく頃、砂浜で渚の手を強く握りしめると、力なく握り返した。
別れは訪れた。漆黒の闇から魔の手が忍び寄り、渚を呑み込むように奪ってゆく。
渚!そう何度も叫び続けた。
渚は一度だけ口を開いた。
「優ちゃんごめんね。ありがとう」
それが最後だった。
病室にいた渚の両親が嗚咽する中、俺は渚の顔からVRゴーグルをそっと外した。
二人で行くはずだった故郷の海をプログラムし仮想現実化して見せたのだ。
俺たちは結婚の約束をしていた。
彼女が余命三カ月だと宣告され、俺がしてやれることは、もうこれしかなかった。

握りしめていた渚の手は、まるで潮が引いていくように冷たくなっていった。
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公開:18/05/05 22:02
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豊丸晃生( 大阪 )

ショートショートの神様、星 新一を崇拝しています。
お笑い系のショートショートを中心に書いていきたいと思いますので、よろしくです(^^)。

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