傍らの人①─蜘蛛の糸

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或る日のこと──。
暇を持て余していたお釈迦様は、地獄の罪人を観察しておられました。

「おい蜘蛛よ。あすこに見える犍陀多という男」
「はあ」
「生前に蜘蛛を助けた事がある」
「はあ」
また碌でもない事をお考えのご様子。
「一度だけチャンスをやろうと思うてな、お前糸を垂れてやれ」
お釈迦様の命に従い、妾は自分の糸を犍陀多の頭の上へと降ろしてやりました──。

犍陀多はその糸に縋り付き、地獄の底から極楽を目指します。妾はそのまま彼だけを引き揚げてやろうとしましたが。
「待てッ!」
「はあ」
「決して引き揚げてはならん!」
案の定、他の罪人も昇ってきます。
そして犍陀多が他の罪人を足蹴にした瞬間、お釈迦様の眼力で蜘蛛の糸はぷつりと切れてしまいました。
罪人共が真っ逆さまに地獄へ落ちてゆく様子を、お釈迦様はとても楽しそうに見ておられました。

妾だけが知っているお釈迦様のご趣味でございます──。
ホラー
公開:18/05/02 19:51
更新:18/05/30 17:13
文豪 芥川龍之介 釈迦

渋谷獏( 東京 )

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