卵と他人事

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いつの間にか両掌に卵を一つ抱いていた。
周りを見ると、皆も僕と同じように、様々な色の卵を各自好きな形で持ち歩いている。
沢山の人が道を行き来する中、ヒビの入った卵を手に言い争う人や、一方的に卵を割られておろおろしている人もいた。

泥水のように濁った液が零れたり、透明な水が流れ出したり──
割れた卵が見せる反応は様々で、僕は醜いなあとか綺麗だなあとか、そんな事を思いつつ遠巻きに眺めていた。

その時、割れた卵を見ようと集っていく野次馬に腕をぶつけられて、僕の掌から卵がころりと転がり落ちた。

拾おうと腰を屈めた途端、近くにいた誰かが僕の手ごと卵を“ぱしん”と踏み付けた。

──ふと目が覚めて顔を上げると、窓外の景色が丁度動き出す所だった。
車内は満席で、停車したバス停で降りる客は一人もいない。
今し方乗ってきたらしい、腰を曲げて通路に立っている老人客を見つけて、僕は何となく席を譲った。
ホラー
公開:18/05/02 17:40
更新:18/05/02 17:42

甘党めぢろ( お休み中。 )

色々疲れたのでお休み中。ここは跡地になりました。

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