0
146

人には欲望がある。その一つが海水欲だ。人は心の何処かで海を欲している。母なる海を

猛暑の日、母は恋人と蒸発した
あまりに突然だった。気付いた時には私の心に深い溝が出来ていた
けれども、時間の経過と共に深い溝は埋まった
なぜなら、砂漠の砂が積もる話もあるだろうと相談を聞いてくれたからだ

ある時、風の噂で聞いた。隣町に母がいるらしい
ザワ、ザワ
心がざわめいた。正直、私はどうしていいのか分からない。今さら、どんな顔で会えばいいのだ
急に会いに行ったとしても母には新しい家族がいるだろう。子供もいるかもしれない
会わない方がお互いのためだ。傷付かなくて済むから。わざわざ、傷口に塩を塗る馬鹿はいないだろう
そう分かっている。私が行けば、母は凍り付く。難局の事態だ。

だから、私は夏になると潮干狩りに行く。子供の頃の哀愁に誘われ
そして、砂に埋もれた、母とのあった貝 (温かい)思い出を掘り出すのだ
公開:18/05/03 22:29
更新:18/05/05 15:43

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容